京都大学教育推進・学生支援部 入試企画課 高大連携事業による出前授業「薬を学ぶ・研究する」

2017年11月15日

進学・進路指導

 日時:2017年11月11日(土)13:30~16:00

 講師:京都大学大学院 薬学研究科 博士後期課程2回生 秋柴 美沙穂氏

     入試企画課 荻野 隆司氏

 参加生徒: 28名(高1(19名)高2(9名))

H29.京大出前授業1 H29.京大出前授業2

 本校の生徒の中には、将来、薬学部で学びたいという生徒が多いということもあり、今年度は薬学研究をされている大学院生の方にお越しいただいた。薬学とは何かということについて3つのパートに分けて、大変分かりやすい授業を行って下さった。また、質疑応答に多くの時間を割いてくださり、生徒たちは熱心に耳を傾け、刺激を感じた様子であった。生徒たちの意欲、将来への夢が大きく膨らんだと感じている

<授業の内容>

1.薬を作る

 創薬の過程は、まず基礎研究から始まる。病気のメカニズムを知る。創薬シードの発見、リード化合物の探索、体内動態研究、製剤化研究という段階である。基礎研究には2年から無限大の年月がかかる。その後、実用化に向けて、治験、検査や研究が重ねられ、1つの薬ができるのに10年かかることが普通ということである。「一生に一度、新薬が作れれば幸運」だ言われることがあるくらいだ。

2.薬を学ぶ

 薬学部では1・2回生のときに、薬に関わる全ての分野を一通り、広く浅く学ぶ。その後、最終的には深く研究する分野を1つか2つ選ぶ。薬学科は6年制で薬剤師を養成する。薬科学科は4年制で、大多数が大学院に進学し、創薬研究者となっている。秋柴先生ご自身は薬科学科に進まれ、博士号を取得した後には海外で研究することも考えておられる。

3.ご自身の研究紹介

 目標は「タンパク質を細胞内に送達すること」。高分子医薬品は分子が大きいために、細胞内の標的にたどり着けないのだが、ペプチドを用いてそれを到達させる研究を行っておられる。それが実現すれば、きわめて副作用を少なくすることができるそうだ。

 研究とは次のようなプロセスで、根気のいるものである。

   問題(できない、わからないこと)→仮説(こういう原理ではないか?)

   →仮説を検証する→また仮説に戻る

                ↓

   成果を発表する(=論文)実験結果を論理的に示し、世界中の科学者に納得させる。

H29.京大出前授業3 H29.京大出前授業4

<授業に関する質疑応答>

Q)薬学を学ぶと決めるにあたって、一番の決め手となったのは何か。

A)理系に進むことはずっと前から決めていた。何か作りたいという思いがあったということと、人の体、生物に興味があったため。薬学の基礎研究の第一段階である、「病気のメカニズム」は医学部や理学部でも学べる。また、製剤には工学系の研究も入って来る。薬=薬学部ではないということも知っておくと良い。

Q)薬剤師として就職する方と、研究職に就かれる方とどちらが多いか。

A)京都大学に関して言うと、80名のうち、薬剤師資格を得るのは30名だが、実際に薬剤師になる人は少ない。薬学科では4回生から6回生までは研究を行うのだが、研究が面白くなり、そちらへ進む人が多い。薬科学科の学生の大半は修士課程に進み、その後企業(製薬や化学メーカー)に就職し、開発職や治験に携わる人が多いようだ。

Q)研究グループはどうやって決めるのか。

A)自分の研究したい分野で決める。4回生になると研究室に配属される。HPには研究室のリストが載っていて、それぞれのテーマを見られるので、参考にしてみよう。

Q)高校時代の勉強について、どんな様子だったか。

A)高校2年生まではクラブ活動を熱心に行っていた。高1時は、数学には力を入れていたが、そのほかは宿題に取り組むくらいだった。定期テストはきちんと勉強していた。高3になってクラブを引退してから本腰をいれて勉強した。高3でも体育祭では応援団長をし、切り替えるのは大変だったが、周りの友達に影響を受け、助けられた。

Q)京都大学について

 周りにすごい人が多く、想像もしなかった価値観を持っている人がいたりする。後輩の中にも、テーマをどんどん考えていく素晴らしい人がいる。人が面白いというのは魅力。また、研究設備や機器が整っていて、自由に研究できる。

                                                 

 授業に続いて、京都大学 教育推進・学生支援部 入試企画課の荻野隆司氏により、京都大学の紹介が行われた。京都大学の一般的なイメージは、知的、先進的、自由、個性的、多様などだが、数字で示してみると、イメージが具体化できる。

・1897に創立され、今年で創立120年。H29.京大出前授業5

・卒業生数 20万名以上(学部)

・学生数  約23000名

・教職員数 約5500名

・渡航する学生 2810名

・留学生  2214名

・外国人研究者  約1000名受け入れ

・海外の交流拠点 57拠点

・クラブやサークル 約200団体

 京都大学のキーワードとして「自由の学風」と「研究型大学」ということを挙げられ、様々な例を用いながら分かりやすく伝えて下さった。「対話を根幹とした自学自習」を大切にしておられ、「議論に教授か学生かという立場や、性別、国籍などは関係がない。立場を議論に持ち込むと進歩が止まる」というお話が印象的だった。東京大学が本来、官吏養成を目的としたのに対し、京都大学は研究、学習、教育を一番にしようと創立されたことから、その2大学は根本的に特徴が異なる。京都大学では、一回生からILASセミナーという場で主体的に学習ができる。また、国際化の取り組みも進み、語学研修プログラム、休学せずに留学できるシステムがある。交換留学の協定校は100校に上る。留学生ラウンジで多国籍の留学生と交流できたり、一緒に英語で講義が受けられる。中でも一番の魅力は、研究するための環境が整っていること。学内にスーパーコンピューターがあるため、実験がスムーズに進み、スピーディーに研究を行える。様々な観点から、京都大学の教育内容が紹介され、生徒たちは憧れの気持ちを新たにしたようであった。

 入試についての概要説明の後、質問にも対応してくださり、生徒たちは大変有難い、貴重な時間を過ごすことができたようだ。

H29.京大出前授業6

[生徒たちの感想より]

―授業を聞いて―

・まだ研究のことをよく理解していない私も、研究の流れや、どういう風に仮説を立てていくのかなどが分かり、より薬学に対して興味が湧きました。私は薬剤師の資格を取得できる薬学科に行きたいと思っていたのですが、薬科学科に進んで研究するのも面白そうだと思い、視野が広がった気がします。とても有意義な時間を過ごせました。

・研究に熱中するのは楽しそうだなと思いました。今まで、薬学部に入ったら、薬剤師になると考えていましたが、この授業に参加したことで、京都大学では主に薬の研究をして、一部の人が薬剤師になるということを知りました。そして、薬学部でなく、工学部や理学部でも薬に携われることも分かりました。改めて理系に進み、研究がやりたいと思いました。

・京都大学の薬学部について詳しく知ることができ、とても有意義な時間を過ごせました。私も人の生命や体の仕組みについて興味があり、そのような研究をすることを将来の目標としているので、今日の講義を受けて、将来へのイメージが少し具体化できました。今からちゃんと色々、どのような学科や大学を選ぶか決めておこうと心から思いました。

・勉強だけでなく、行事にも積極的に取り組む方が、入試においても成功するんだと思いました。またこういう機会があれば、参加したいです。

・APTX4869を例に挙げて下さったことで、薬を作る過程がイメージしやすかったです。薬の効く速度がカプセルによって調節されていることは知っていたけれど、そのカプセルがどう作られているかなど考えたことなどなく、カプセル作りを専門にしている人がいることを初めて知りました。具体的な薬の作り方を聞く機会など全くなかったので、とても楽しかったです。ありがとうございました。

・京都大学で今実際に研究をしている先生の貴重なお話が聞けたので、とてもためになりました。また、先生が実際に行っている研究内容も教えて下さったので、より薬学部に興味がわきました。

・患者さんに薬を提供するまでに、疑問→何が必要なのか→何が原因というところから始まり、薬を開発するには、長い時間がかかるということが分かった。

・高校時代の勉強についても聞けて、とても参考になりました。

・今までぼんやりしていた薬学部のイメージがしっかりしました。特に先生が研究されているタンパク質のお話が面白くて、楽しかったです。

・例として挙がっていた薬剤の効能がとても面白く、話を聞いていて興味をひかれました。

・受験する大学を決定する動機など、普段聞くことのできない話を聞けたので、貴重な時間を過ごすことができました。

・新薬の開発には、あらゆる専門的な知識が関わってくるということを知り、私たちに日常に必要な風邪薬や湿布なども、とても多くの人が何年も費やして作られたということに感動しました。

・薬学部といえば、化学のイメージが強かったけれど、まずは広く浅く、色々な分野を学べると聞いて意外だなと思った。病気のメカニズムなど、医学部で習いそうな分野もあるので、名前通りの薬学だけではないのだと驚いた。創薬研究では、1つの薬にだいたい10年かかるという話や、一生で一つ新薬を作れたら幸せ者だとされているという話を聞いて、気の長いことだなと思った。研究も楽しそうだなと思った。

・薬学部と聞くと、「製薬」のイメージが強かったのですが、今日、講義を聞いて、考え方が変わりました。薬一つ作るのに、病気のことを詳しく知り、何度も改良を重ね、販売するまで何十年もかかることに驚きました。

・薬を作る研究に興味を持ちました。秋柴先生がどうやって学部を決めたのかという話を聞いて、自分の進路を決める参考になりました。また、高校の時の勉強の様子を聞いて、自分と似ているところがあったので、自分ももっと頑張ろうと思いました。薬学部のことをより深く知ることができたので、この授業を受けて良かったと思います。

・研究の過程など多くのことを教えていただけ、より興味がわきました。大学のことを調べる際に、研究室の内容を詳しく調べることはなかったのですが、大学選びの参考にしようと思いました。

・研究されている様子を聞いたり、進路を決定されたときの話を聞いて、視野を広く持つことが大切だなと思った。もともとそれほど薬学というものを知らなくて、どんなものかなと気になってこの授業を受けたが、大学のリアルな話や、研究の大変さを聞くことができて、大学に行きたいなという気持ちが増しました。

・学部を名前で選んでいるところもあったので、今日教えていただいた、生物の研究などを深くできる理学部も考えてみようと思いました。

―大学紹介を聞いて―

・施設やカリキュラムがとても素晴らしく、充実していて、京都大学への憧れの気持ちが高まりました。とても面白そうな研究をたくさんしていて、これから一生懸命勉強して入れるような実力をつけたいと思います。

・ホームページや自分で調べたこと以上のことを知れてよかったです。とても楽しかったので、時間があっという間に過ぎました。とても面白そうな大学だと思いました。

・自由に研究できるというのは魅力だなと感じます。施設が整っていて、研究がスムーズに進められるというのはすごく良いなと思いました。

・(自分の持つ)京大のイメージに「自由」というのがなかったので、驚きました。自分で考えて、自分のやりたい研究ができるのが楽しそうでした。

・選択肢がたくさんあるので、色々なことに挑戦できるところが良いと思いました。留学もできるので、海外で学んでみたい。

・自由の学風と研究型大学である点に魅力を感じました。またILASセミナーがあることや、普段から留学生と関わることができることを知ることができて良かったです。今後の進路選択において、京都大学も視野に入れてみたいと思いました。

・「自由」というワードが心に残った。また、先生と生徒の関係が緩やかなところも良いなと思った。オープンキャンパスでは聞けなかった話も聞けて、良い機会になりました。

・一人で勉強するということの先で、他人と共有して理解を深められるというこころが良いなと思いました。

・京大の校風に憧れました。